この間、ルキアさんに特訓の相手をしていただいて、かなり刺激された。あらためて、ルキアさんの実力を思い知ったと共に、私の日々の修行も今まで以上に頑張ろうと思えた。
よ〜し、今日も頑張るぞー!!今日は隊舎ではなく、広めの丘で修行をしよう・・・と思っていた矢先に。


「剣ちゃん!あっちだよ!!」


そんな可愛らしい声が聞こえた。・・・これは、草鹿副隊長の御声だ。
・・・・・・ってことは、まさか、剣ちゃんって・・・!!


「あぁ?そんなに強ぇのか?」


更木隊長ー?!!
戦闘を好む、最強の部隊と言っても過言じゃない、十一番隊の頂点、更木剣八隊長だ・・・。


「うん!あ、久しぶりー!!」


そう仰って、草鹿副隊長は、私に手を振っていらっしゃった。私も慌てて、礼をする。


「あの子だよ、剣ちゃん。」

「・・・そんな風には見えないがな。」

「でも、本当はすっごく強いんだよー。私、この前見たもん!」


・・・待ってください、草鹿副隊長。何のお話ですか?って言うか、この状況、かなり危険じゃないですか?


「まぁ、やってみればわかるが・・・。」


ほら、危険ー!!!!


「でしょ?大丈夫だよ、剣ちゃん!」


草鹿副隊長!私が大丈夫じゃありません!!!
たしかに、私は修行を頑張ろうと思っていましたが、更木隊長とお手合わせする実力も勇気もありません!!!!
一体、どうして、こんなことに・・・。


「待ってください、更木隊長!!」


そう言ったのは、私ではなく・・・。


「阿散井副隊長・・・!!」


いつもなら、こんな風に呼びかけられないけれど、今はそんなことよりも自分の命が心配で、思わずその御名前を口に出してしまった。


「コイツは、うちの隊に入ったばかりの新人です。更木隊長と戦える相手じゃありません。」

「だとよ。」

「あっれー?おかしいなぁ!・・・・・・そっか。ごめん、剣ちゃん!間違えちゃった。」

「・・・そんなことだろうと思ったぜ。悪かったな。」


更木隊長は、私に向かってそう仰った。・・・なんだ、本当はすごくお優しい方なんだ!!
それにしても、草鹿副隊長は何をお考えになったんだろう・・・。そう思って、更木隊長の肩に乗っていらっしゃる草鹿副隊長を見ると、ニコッと笑って、ウィンクをなさった。
・・・・・・ん?もしかして・・・。そう思って辺りを見渡すと阿散井副隊長がいらっしゃった方角に、ガッツポーズをしている人が見えた。
・・・・・・あれは、十一番隊の斑目一角第三席!!


「大丈夫か、。」

「は、はい・・・。あの、お助けくださり、ありがとうございました。」

「いや・・・。」

「あの1つお聞きしたいんですけど・・・。」

「ん?どうした?」

「阿散井副隊長は、どうしてここにいらっしゃったんですか?」

「それが・・・うちの隊舎に、十一番隊の一角さんが駆け込んできてよ。」


やっぱり・・・!!ってことは、これは草鹿副隊長が仕組んだことなんだ!


「何かの勘違いかと思ったんだけど、一応、更木隊長の霊圧探って来てみたら・・・。」

「お忙しいところ、すみませんでした・・・。」


本当、すみません・・・。これは、たぶん皆さんの演技なんです・・・。おそらく、更木隊長は何も知らずに草鹿副隊長に無理矢理連れて来られたと思うんですけど。
あと、私も全く知りませんでしたが。本当、怖かったんですから、草鹿副隊長!!


「事が起こる前で良かったな。」

「はい、ありがとうございます!」

「この後、お前はどうするんだ?隊舎に戻るのか?」

「あ、いえ!まだ、ここで修行してないので・・・。」

「そうか・・・。頑張れよ。」

「ありがとうございます!!」


草鹿副隊長(更木隊長・斑目第三席の協力)に依る【阿散井副隊長に救助していただこう作戦】、成功。・・・でも、草鹿副隊長からすれば、私と阿散井副隊長が一緒に隊舎へ戻ることまでが作戦だったのかもしれない。・・・ってわけで、やや成功。
ただ、私を驚かすことに関しては、大成功でしたよ・・・。





それにしても、この間の草鹿副隊長の協力は、あの様子からして少なくとも斑目第三席にも、私の事はばれているんだろう・・・。本当、事が大きくなってるよ、絶対。
他の人にも、ばれてたりするのかなぁ・・・。そう心配になって、今日は十一番隊の隊舎近くまで来た。けど!!
私は、誰にそのことを確認するつもりなんだろうか・・・。草鹿副隊長に確認するのが早いけど、他の隊の副隊長にいきなり会うのは失礼だろう。それは、斑目第三席にも言えることであって・・・。
だからと言って、同じ位の人に聞いて、その人が何も知らなければ、かえって自分で噂を広めてしまうようなものだし。
あぁ、どうしよう。そう考えて、十一番隊の隊舎近くで、ずっとうろうろしていた。


「ねぇ、そこの君。さっきから、何してるの?」


その声は、とても素敵だったけれど、とても不審そうでもあった。・・・まぁ、それは当然か。ずっと、見知らぬ人がうろうろしてたら、誰だって怪しむ。自分でも怪しいと思う。
そんな引け目もあって、突然声を掛けられた私は、驚きながら、恐る恐る後ろを振り返った。


「あ、綾瀬川第五席・・・!!!」


そこにいらっしゃったのは、十一番隊の綾瀬川弓親第五席だった。・・・本当、最近の私は、どうして、こう自分より遥かに強い方とお話する機会が増えたんだろう。ある意味、すごく運がいいと思う。


「その腕章からして、君は六番隊だよね?うちに何か用・・・?」

「えぇっと・・・その・・・。」


何て答えればいいのかわからず、しどろもどろになってしまった。ただ、そんな返答では、綾瀬川第五席にもっと疑われてしまうだけで・・・。
あぁ、こうなったら、仕方がない!まだマシな答えをするしかない・・・!!


「あの、斑目第三席はいらっしゃいますか・・・?」

「一角?・・・一角に用事が?」


それでも、不思議そうに考え込んでしまわれた綾瀬川第五席。・・・やっぱり、これは詳しい説明をする羽目になるんだろうか?と思っていると。


「もしかして、君。この間、うちの隊長に狙われた・・・?」

「狙われたって言うか・・・。」

「うちの副隊長の仕業でしょ?」

「ご存知なんですか?!」

「まぁね。」


・・・どうやら、綾瀬川第五席にも、ばれてしまっているらしい。


「草鹿副隊長は何て仰ったんですか?」

「う〜ん・・・。なんか、協力してくれ、って。副隊長は人のことを変なあだ名で呼ぶから、よくわからなかったんだけど。六番隊の女の子が六番隊の副隊長が好きなんだ、ってことぐらいはわかった。」

「あの、それって・・・どのくらいの方が御存知なんでしょうか?」

「たぶん、隊長には話してないと思うから、僕と一角ぐらいじゃないかな。」


はぁ・・・。とりあえず、一安心だ。


「今日は、そのことを確認したくて来たんですけど・・・。どなたにお聞きすればいいのかわからず、ここで躊躇していました。ご迷惑をおかけして、申し訳ございません。」

「いや、別に迷惑じゃないから、いいんだけど。・・・じゃあ、一角にはもう用は無いってことかな?」

「そうですね・・・。そうなります。ありがとうございました。」

「どういたしまして。・・・ところで、僕、君の名前を聞いてないんだよね。」

「あ、申し遅れました。私、六番隊に所属したばかりのと申します。よろしくお願いいたします。」

「よろしく。」


そう仰って、綾瀬川第五席は微笑まれた。・・・なんて、美しい笑顔なんだ!!うっかり、私も惹かれそうになる。
でも、私には阿散井副隊長が・・・・・・・・・って、違う、違う!だから、私は阿散井副隊長のことを尊敬しているだけであって!!
・・・って、一体、私は誰に弁解してるんだろう。
少し恥ずかしくなって、私は俯いた。


「ごめんね。うちの副隊長が余計なことをして。」


綾瀬川第五席は、私が草鹿副隊長に困って俯いたように見えてしまったらしく、そのように仰ってくださった。


「いえいえ!そんなことは・・・!!阿散井副隊長のことを尊敬している私としては、本当に良い機会を作っていただいたと思っております。」

「それなんだけど。副隊長は恋愛感情があるように言ってたけど、それは違うの?」

「そ、それは・・・!!」


違います!!と強く否定したいところだけど、それはそれで阿散井副隊長に失礼な気がする。だからと言って、あるわけじゃない・・・・・・と思う・・・・・・たぶん。いやいや!違うよ、絶対!!私は尊敬してるだけ!・・・そりゃ、もちろん、阿散井副隊長とお話できることは嬉しいけれど、それは憧れているからであって、恋愛感情だなんて!!
そんなことをぐるぐると考えていた私は、なかなか綾瀬川第五席に答えられなかった。・・・これじゃ、余計に勘違いされてしまう!そう思っていると。


「ねぇ、どっちなわけ?僕、そういうこともはっきりしないのって嫌なんだよね。」


あ・・・れ・・・?さっきまでの優しそうな雰囲気はどこへ行ってしまわれたのか・・・。綾瀬川第五席は、少しイラついた声でそう仰った。


「あ、あの・・・。恋愛対象ではなく、本当に尊敬しているだけなんです・・・!」

「へぇ〜、そう。」


答えても、結局綾瀬川第五席の口調は変わらなかった・・・。えぇっと・・・。


「なんだ、面白くない。」


えぇ・・・?!面白くない・・・???私、遊ばれてるんだろうか・・・。


「いや、でも、実際そうだと俺は思うぜ。阿散井の奴も満更じゃないって感じだったしよ。」

「一角も、そう思う?」


突然、後ろで声がして、慌てて振り返ると・・・もちろん、そこには斑目第三席がいらっしゃった。
皆さん、日常から気配を消すのは、やめてください・・・!!


「もうちょっと、確信できるものがねぇとなぁ・・・。」

「それもそうだね・・・。じゃあさ、こんな作戦どう?」


私のことはそっちのけで、お2人はコソコソと話し合いを始めてしまわれた。・・・本当、事が大きくなってないかなぁ?


「・・・・・・よし!じゃ、俺は先行ってくるぜ!弓親、お前もいいタイミングで来いよ。」

「わかってるよ。一角の方こそ、へましないでよ。」

「当たりめぇだ!」


斑目第三席は、そう仰ると、瞬歩で何処かへ行ってしまわれた。私まだ、斑目第三席に、ちゃんと挨拶してなかったんだけどなぁ・・・。
そんな後悔をしている暇もなく、綾瀬川第五席が仰った。


「僕らも行くよ。」

「へ??」

「早く、ついて来る。」

「は、はい!!」


訳がわからなかったけど、綾瀬川第五席の圧迫感に負けて、すぐに頷いてしまった。・・・綾瀬川第五席、第一印象と随分違う方だ・・・・・・。

私たちが来たのは、六番隊の隊舎近く。既に斑目第三席が隊舎前にいらっしゃって、阿散井副隊長と何かを話されたあと、何処かへ移動をされた。
そして、私も綾瀬川第五席の指示通りに、その後を追い、人気の無い静かな所へやって来た。静かな所だったので、阿散井副隊長と斑目第三席の御声はよく聞こえた。私たちもバレないように、気配を消して(と綾瀬川第五席が仰ったので・・・)、様子を窺っていた。


「この辺でいいだろう。で、さっきの話の続きだが・・・。お前んとこの新人のって奴をうちに引き抜きたい。」


・・・・・・えぇ?!!斑目第三席がそう仰ったってことは、私が十一番隊に???
いや、これは何かの作戦なんですよね??と確認したかったけど、今は静かにしておかないと、ばれてしまうので我慢した。


「この間、隊長に狙われてたとこを見てたんだが・・・。アイツは、うちの隊に入れば、本当に強くなれると思う。」

「・・・は、どう思ってんですか?」

「いや、まだ確認はしちゃいねぇが、まずは副隊長のお前に言っておこうと思ってな。」

本人がそうしたいって決めたなら、俺は何も言わないっすよ。」

「そうか。」

「・・・それにしても、一角さん。そんなこと考える人でしたっけ?なんか・・・らしくないっす。」

「そうか?・・・いや、そうだな。俺ものことを思って言ってるんじゃないと思う。なんとなく、俺が引き抜きたい、そう思ってるだけだ。」

「・・・どういう意味っすか?」

「わからない。何処か・・・惹かれるところがあったのか・・・。正直、の考えなんて確認しようとは思ってない。」

「ちょっと待ってください・・・!それなら、話は別です。は、うちの隊に志願して入ってきてくれて、今も日々精進してるんです。きっと、俺や一角さんと同じように、何かしらの目標を持って、うちの隊にいるんだと思います。だから、を無理に引き抜くのは止めてください。そうするのなら、俺は絶対に引き抜かせません。」


そう言い切られた阿散井副隊長は、すごく素敵だった。そして、すごく嬉しかった。私たち隊員のことをよく知ってくださって、それに隊員たちの意思もちゃんと聞いてくださる。


「・・・阿散井。さすが、副隊長だ。・・・いや、悪い。少し、お前を試そうと思ってな。今の話は、全部嘘だ。忘れてくれ。」

「何のために、そんなことを・・・。」

「うちの副隊長は、1回つけたあだ名も忘れちまうぐらいだしよ、阿散井はどこまで隊員のことを知ってんのかってことを知りたかったんだ。」

「はぁ・・・。」

「ちゃんと見てやってるんだな!」

「いや・・・。正直、全員のことは俺も把握してないっすよ。」

「そうなのか?じゃあ、なんでのことは・・・?」

「さぁ・・・、なんとなく。目が離せないって言うか、気になるんですよ。・・・たぶん、いつも必死にやってる姿が自分に重なって見えることがあるからだと思うんですけどね。」


そうなんですか・・・?!!!わゎ、なんて有り難い御言葉なんだろう・・・!!!
そんな感極まっている私とは裏腹に、綾瀬川第五席は少し残念そうだった。・・・何を期待していらっしゃったんですか!


「そっか。まぁ、ソイツのこと、ちゃんと面倒見てやれよ!それじゃ、時間取って悪かったな。」

「いえ、いいっすよ。」


話は終わり、斑目第三席が私たちの所へいらっしゃって、どうだった?と意気揚々と質問をされた。


「もう一押し、何かが欲しかったね。」

「そうか?あれで充分だろう!阿散井は、コイツのことを特別視してるってことだし!な!」


と、特別視・・・!!すごく私には勿体無い御言葉・・・!!


「あの・・・。ありがとうございました・・・!!失礼します!!」


私は、有り難いのと恥ずかしいのと申し訳ない気分に駆られ、その場にいられなくなって、急いで立ち去った。


「はぁ・・・。行っちゃったね・・・。まぁ、今回はこれで良しとしておこうか。」

「弓親?」


綾瀬川第五席(斑目第三席の協力)に依る【阿散井副隊長の私に対する印象を確認しよう作戦】は、成功。でも、首謀者(?)の綾瀬川第五席が不満そうだったので、やや成功。
私としては、もう本当にこの上ない幸せだったので、大成功だと思います!これからも、もっと阿散井副隊長に認めていただくために、六番隊で頑張ります!!









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今回出したかったのは、十一番隊の皆様でした!もちろん、どの隊も好きなんですが、十一番隊は個性的なキャラが多いので、特に好きです♪
そんなわけで、頑張って書いてみたんですが・・・。全員口調がわかりません・・・!!ごめんなさい・・・orz
正直、阿散井副隊長もわかってませんけど・・・;;

そして、まだ続きます(汗)。予定では、あと2話ぐらいですねぇ。というわけで、もうしばらくお付き合いくださると、嬉しいです・・・!!

('08/05/13)